小説と挿繪
第一話：「底なし沼」
文章・ごっち／絵・ランコの姉
そもそもあなたは少し不思議には思いませんか。
どうして底なし沼の伝承が生まれたのか。
「つまりそこには私にしか視えないものがあるのね」
そう彼女が見つけてきたのはただのオカルト話ではなく、私達二人のオカルトサークル
にしか解決できない問題だったのです。
そうそれは彼女なりの、結界暴きへの誘いでした。
第二話：「Lost Vividity」
文章・蛮天丸／絵・麻以
「もう一回簡単に説明するわ。この京都の、寂れた路面電車のある踏切に現
れるテケテケさんっていう妖怪。今日はその真偽を確かめようと思うの」
「テケテケさん？」
「結構有名な都市伝説だよ。人間の女の姿をしているんだけどね、恐ろしい
のはそいつの下半身がないってこと。上半身だけの姿で、しかも腕だけで走
るのよ。いい？ 歩くんじゃない、走るの。大の大人が全力で走っても逃げ
切れないくらいのスピードでね。走るときの音がテケテケっていうから、テ
ケテケさんと呼ばれるらしいわ」
「名前のわりにずいぶん怖そうな妖怪ね」
「怖いかどうかは、見ないとわからないね」
「で、そのテケテケさんがどうしたの？」
「もちろん、その不思議を探るわ。秘封倶楽部としてね」
第三話：「幻想と不可視の肝試し」
文章・青時／絵・ハリヤー
「今はもうほとんど人が住んでいない山村に、廃校になった学校があってね。
村人の話だと……なんでも、夜になると出るらしいのよ」
「出る？」
「幽霊が」
「……それ本気？」
「本気。しかも子供の幽霊らしいわよ。三人も出るんだって」
「その幽霊に足はあるのかしらね……」
第四話：「七つの子供に幸福を」
文章・喜一／絵・心太
その廃墟に入ってからね。
二人は気づくんですよ、どこかで鳴いている猫の声に。
ォンニャアア、ォンニャアア——って。
でも、なんか猫というには、ちょっと怪しい鳴き声なんだなぁ。
猫以外かなぁ。人だったりするのかなぁ。
そうは思ってみたけど、こんな場所に人が住んでるわけがない。
だから、子猫が迷い込んだと思ったんだよ。
こんな廃墟だしね。
ォンニャアア、ォンニャアア。
ォンニャアア、ォンニャアア。
でも、その部屋には誰もいない。
誰もいない——はずだったんだ。
第五話：「ああこの素晴らしい世界のために」
文章・もに／絵・谷屋楽
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私は絶句して戦慄した。差し伸べられた手、いや腕。あるはずの手首から
先が無かったからだ。そこで一度、私の意識は途切れる。
「どうしたのよ、メリー。変よ」
心と身体が叫んでいた。これは悪夢だ。
「変なのはあなたよ、どうして手首が無いの」
目の前に居る何かはケタケタと笑いだした。良く見ると顔にひびが入っている。
「手首が無いのは当たり前じゃない、まだ途中なんだもの」
「途中？ どういう事なの」
